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7-3. 借入金と貸付金

今回は借入金と貸付金の処理を勉強します。つまり、お金の貸し借りです。全然難しくありませんのでサクッと理解してください。ただ、一つポイントがあって、皆さんご存じだと思いますが、お金の貸し借りには必ず利息が発生します。

借入金と貸付金

例1 現金1,000円を貸し付けた。

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現金が1,000円減っているので貸方は現金1,000円です。では借方はなんでしょうか?貸した以上将来返してもらえるわけで、将来お金をもらえる権利(資産)が発生しています。したがって、借方は貸付金(資産)1,000円です。

例2 返済日が来て貸付金1,000円を利息10円とともに現金で回収した。

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とりあえず利息込みで現金1,010円もらっているので借方は現金1,010円です。これは絶対です。では貸方はなんでしょうか、お金を実際もらったことにより、貸付金という権利がなくなっているので貸方貸付金1,000円です。あたりまえですが、1,010円ではないです。貸したお金は1,000円ですから返してもらえる権利は1,000円です。その結果として差額が10円でますが、これは貸したお金を返してもらったわけではなくて、利息(お礼)をもらったわけですから、貸方受取利息10円です。

例3 現金1,000円を借りた

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貸付金と逆です。お金は増えているので、借方現金1000円ではありますが、その分お金を将来返さないといけない義務(負債)を負いましたので貸方借入金(負債)1000円です。

例4 返済日が来て借入金1,000円を利息10円とともに現金で返済した。

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以上は通常の貸付金借入金でした。

手形貸付金・手形借入金

通常の貸付金と借入金以外に手形貸付金というものがあります。通常の貸付金というものは借用証書という契約書を結んでお金を受け渡しするわけですが、これは契約書を結ばずに手形を受け渡す取引です(もちろん契約書を結んでも全く問題ないです)。なんでこんな取引があるかというと、これも手形取引のところで説明した理由と同じです。

みなさんが友達にお金を貸す場合を想定してください。普通、飲み代を貸したとかなら借用証書を作ることはないと思いますが、結構まとまったお金を貸したので借用証書(契約書)を作ったとします。この借用証書にはどんな意味(効力)があるのでしょうか?

もし、相手が利息込みできっちり返してくれれば何の意味もありません。返してくれれば、借用証書なんてなくたっていいわけです。だから相手が親兄弟で信用できる時とか、金額が少額で返済に疑問がない時は、面倒だし相手を疑っているみたいで角が立つので契約書は作らないわけです。

では、相手が返してくれない場合はどうでしょうか。借用証書を持っていると何ができるでしょうか?まず、借用証書を見せて、お金を返せと迫ることができます。ただ、それは単なる返済の催促です。相手がお金持ちで忘れていただけとかなら、思い出してくれて意味があるかもしれません。しかし、相手が完全に開き直っていて払う気がない場合(ないものはないとか絶対後で払うからもう少し待ってくれとか言っている場合)、何ができるでしょうか?いくら借用証書を見せて迫ったところで相手に払う気がなければどうしようもないです。ちなみにいくら相手が返してくれず、こちらには回収する正当な権利があったとしても、相手の財布を奪ったり、車を勝手にもらったりするとそれは窃盗罪になります。これは自力救済禁止の原則と言って日本の法律の大原則の一つです。実力行使が出来るのは、警察と裁判所のみです。警察でも現行犯以外は裁判所の許可(令状)が必要です。

取りえる最終手段は裁判所に行くことです。裁判で勝てば、裁判所の力を借りて強制的に払わせることができまし、相手にお金がなければ、相手の持ち物を裁判所が売って(競売)その売却代金から回収することができます。ただ、そんな面倒なことをしたくないのが普通です。そこで、手形の登場です。

10,000円を貸して、3か月後に利息込みで10,500円を返してもらうとします。その場合に、貸した時に3か月後が期限の約束手形(振出人が借りる人で名宛人が自分)を振り出してもらうのです。相手が手形の振出しを渋っていたら自分で為替手形を振り出してもよいです(振出人自分、名宛人借主、指図人自分:自己受為替手形)。既に説明したように、一度手形が振り出されたら、それが決済されなかったときは、相手は周囲の信用を一気に失い、倒産状態になります。したがって、相手には倒産or 支払の2択というプレッシャーがかかります。つまり、こちらとしてはだいぶ安心して貸すことができます。もちろん、それでも、相手が本当に倒産したら回収はできませんが、お金を貸すということはそういうことです。そのリスクと引き換えに利息をもらっているわけです。

では、仕訳を見てみましょう。

例5 現金5,000円貸し付けて利息込みの5,100円の約束手形を受け取った。

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この仕訳は要注意です。次の例6と合わせてしっかりと理解してください。まず、現金5,000円を渡していますから貸方現金5,000円は絶対です。では借方はなんでしょうか。まず勘定科目ですが、手形貸付金という専用勘定を使用します。これも、貸付金や受取手形ではいけない理論的な理由はないのですが、実務上は専用勘定を使うのが一般的なので、試験でも大抵そうなっています。ただし、問題は金額です。貸したのは5,000円だから手形貸付金5,000円としたいところですが、現金と引き換えにもらったものはなんでしょうか?額面5,100円の手形です。なので、借方は手形貸付金5,100円(資産)です。あくまで、資産計上しているのは5,100円の額面の紙切れであることに注意して下さい。その価値は5,100円です。そうすると貸借に差額が出ます。それは何かというともちろん利息です。したがって貸方受取利息(収益)100円も必要です。

例6 返済日が来たので手形を銀行に取立てに出して5,100円を当座預金とした。

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これまでの説明を聞いててなんかおかしいと思った人はいませんか?ここは重要なのでちゃんと説明します。通常の貸付金と手形貸付金で仕訳を比べてみましょう。

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上記の仕訳は、同じ5,000円を貸し付けて、返済日に同じ利息100円込みの5,100円をもらっていますが、少し違います。それは資産勘定が貸付金か手形貸付金かという違いもありますが、ポイントはそこではありません。大事なのは、受取利息の計上タイミングです。

通常の貸付金では、お金を貸した時は単純にお金が減って、貸付金という資産が増えただけで利息は認識されていません。お金を返したもらった時に、貸した以上の金額をもらっているので、貸した金額との差額を利息として認識しています。一方で、手形貸付金の時は貸した時に受取利息を認識しています。これはなんででしょうか?確かに、貸した金額以上の額面の手形をもらっているのだからしょうがない、利息を仕訳しないと貸借の金額が一致しないという理解も間違いではありません。

本当は、この話を正確に説明するには手形とは何か、利息とは何かということの深い理解が必要であり、また、今からする説明だけでは不十分で、場合によっては間違いと主張する人も出てくるかもしれません。特に2級や1級の合格者は、おかしいというかもしれません。さらに、今からの話はかなり会計学理論の立場からは怪しいです。確かに、第8章で補足する話になるのですが、ここではこの仕訳からある感覚をつかんでほしいのです。それは手形とは何かという話です。

以前から何度も、手形とはお金みたいのだと説明しています。この意味を考えるためにもう一度、下記の例を見てみましょう。

例9 買掛金の支払いとして約束手形1,000円を振り出した。

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この仕訳は、大丈夫だと思いますが、みなさんこの仕訳をどう理解していますか?

買掛金という、後で払わなくてはいけない義務(債務)がもともとあって、それに関して手形を渡した。ただ、手形も期日が来るまで払わなくてもよく、期日が来たら払わなくてはいけない義務(債務)であり、買掛金と同じ義務ではあるが、ただの約束から手形債務に性質が変わったから、買掛金という負債を減らして支払手形という負債を増やした、という理解をしていると思います。つまり、自分としてはいずれ払わなくてはいけないという意味では何も変わっていないが、単に簿記のルールとして、将来の義務を違う勘定科目に変えなくてはいけないと。

確かに、その理解で正しいのですが、手形を振り出した側の感覚は実は違います。例えば、10月31日に1,000円払わなくてはいけない買掛金があったとして、10月31日期限の約束手形1,000円を振り出して相手に渡したとします。この時に、結局まだ払っていないのはその通りです。しかし、手形を振り出した方はもう払った、若しくは、それにかなり近い感覚でいます。

また手形をもらった方としても、売掛金を手形で”回収“したと言います。もちろん、現金自体もらったわけではないし、3か月待つのは何も変わりません。相手が倒産したら、もらえないのも変わりません。ただ、何度も言うように、手形は大丈夫だろうという安心感が高いのです。つまり、手形を振り出したりもらったりするというのは、現金を払ったりもらったりしたのに近い感覚なのです。この結果、貸付金と手形貸付金で処理が異なると今は理解して下さい。

通常の貸付で5,000円貸した時に、借方貸付金は5,000円です。よくよく考えてみると将来5,100円もらえる約束をしている以上、将来お金をもらえる権利(資産)は5,100円なのではないかと思うかもしれません。でも、そうはしません。なぜかというと5,000円貸した時点では将来もらえる権利は5,000だからです。なぜ、5000円貸して将来(例えば3ヶ月)5100円もらえるのでしょうか。それは利息100円という合意をしたからです。ここで、利息について考える必要があります。

利息とはお金を貸すというサービスの対価です。それはお金を貸したからもらえるものですが、貸しただけで一定額もらえるのではなく貸した期間に応じてもらえるものです。1ヶ月貸した場合と3ヶ月かした場合の利息は当然違います。条件(利率)が仮に同じだとしても、期間が違えば利息は違います。したがって、貸した時点ではまだ一日も経っていませんから、利息は発生しておらず、将来もらえる権利は5,000円です。3ヶ月後に5,100円もらえるからといって、借方の貸付金を5,100円としてしまうと、出て行ったお金は5,000円なので、貸方に受取利息100円が必要となります。しかし、その利息の100円はまだ発生していないしもらってもいません。だから、収益は計上せずに、貸付金を5,000円とします。

その一方で、手形貸付金の場合は、払った時に受取利息100円を認識します。まだ1日も経ってないから利息は発生していないじゃないかという意見はその通りですが、手形はお金みたいなものだから、もうもらったと考えるのです。

以上はかなり際どい説明ですが、とりあえずこのように理解してください。会計学上の本当の論点は手形の額面が5,100円だからと言って、借方手形貸付金5,100円としてよいのかという議論で、そもそも手形と有価証券は一体何が違うのかという議論になるのですが(結論は手形は有価証券です)、今はわからなくて結構です。簿記3級という入門段階にいるわけですから、何百年の実務を受けて発展してきた会計学の議論より先に、簿記の基礎にある当たり前の実務感覚を理解して下さい。手形をもらったんだから利息も先にもらったようなものだろう、で構いません。

なお、復習も兼ねていじわる問題を練習します。

例10 現金5,000円貸し付けて、相手方振り出しの約束手形を受け取った。なお、利息100円を差し引いた残額を小切手で渡した。

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これは意地悪ですが、仕訳はできないといけません。まず、借方は手形貸付金5000円です。問題文を読む限り額面は5,000円ととれるからです(ここが意地悪)。貸方は現金4,900円で、差額が受取利息100円です。
なお、利息をあらかじめ引いて渡すのは相当悪質で、私が知る限り闇金と街金以外やりません。というかやっていいのかな?大手予備校の問題集に載ってたので足しましたが、本当にこんな取引があるとはとても思えません。

例11 現金5,000円貸し付けて、相手方振り出しの約束手形を受け取った。なお、利息100円は返済時に現金でもらう契約となっている。

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大丈夫ですか?手形貸付金だからと言って、必ず利息込みの手形を振り出すというルールはありません。もし、利息は手形に含まれず、現金で払うのであれば、通常の貸付金と同じく、利息をもらった時に受取利息認識です。利息はまだもらっていないからです。手形貸付金は常に手形の額面、借方の現金預金は常に実際に支出した金額です。

次から、手形借入金の説明をします、単に貸付の逆ですから、仕訳を見ていくだけとします。

例12 銀行から現金1000円を借入れ、利息込みの額面1200円の約束手形を振り出した。

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貸方は手形借入金で金額は額面、借方現金は実際にもらった金額で、差額は支払利息です。

以上が、借入金と貸付金の仕訳でした。

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