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3-2. 上場企業とは何か

皆さんは上場企業という言葉を聞いたことがあると思います。しかし、いったい上場企業とは何なのか、非上場企業と何が違うのか、を説明できる人は少ないようです。せっかく、株式会社とは何かを学んだのですから、ここでは、上場企業というものを学びましょう。

上場企業とは

今まで説明した、株式会社の理念が一番あてはまるのは、いわゆる上場企業です。上場企業は、証券取引所で株式の売買が行われています。誰でも、証券会社に口座を作れば、その取引に参加できます。参加者は、持っているA社株式を“いくら”で“何株”売りたいという売り注文や、“いくら”で“何株”ほしいという買い注文をだすことが可能であり、売り注文と買い注文が合えば取引成立です。

市場で株式が売買されていて、誰でも取引に参加できる、つまり誰でも株主になれるというのが上場企業の特徴であり、そこから数々の制限が生まれます。株主になるということは、配当金で儲けようとか、今後成長するだろうから今安く買っておいて成長後に高く売って儲けようとか、リターンを狙うわけですが、その反面、会社の経営リスクを負うことになります。証券取引所に株式を上場して、会社としては顔も見たことのない他人が株主になるということは、その人に経営リスクを負担させることになります。したがって、会社は、その業績を広く開示することが義務付けられます。また、開示されたところで嘘だったり間違っていては意味がありませんから、上場企業では財務諸表を監査法人(公認会計士の集まり)が監査し、この財務諸表は正しいから皆さん信用してよいですよと保証します。

株に投資して、仮に失敗したとしてもそれはその人の自己責任です。これは投資の原則です。ただし、嘘の情報が出回っていて、それに騙されて投資に失敗した時にそれも自己責任と言われたら、誰も投資しなくなります。優秀なアイデアを持っているけどお金がない人と、お金はあるけどアイデアはないという人をつないで、意欲的な人がアイデアを実行に移せるようにして、社会に役立つ企業を世に登場させることが株式市場の目的ですから、お金のある人が自己責任で積極的に投資できる環境を作る必要があるのです。会社の情報が正しく公開され、その財務諸表に一定のお墨付きが与えられることで初めて、投資家たちは株式の売買を自己責任で行えるようになるわけです。

株式上場のメリット

もう少し、上場企業を考えてみましょう。先ほどの例を使います。資本金100万円でスタートした会社です。最初は10人が10万円ずつ投資してスタートしました。そして1万円につき株券1枚で、合計100枚の株式を発行しました(10人に10枚ずつ)。会社は元手たる資本金100万円に加えて銀行からもお金を借りて、事業を行っているとします。さらに、株式が上場されていて、いろんな人が100枚の株式を売ったり買ったりしています。ここで、よく考えてほしいのは、市場でやり取りされているのは、株式の売買であり、売主と買主でお金は動いますが、会社には一円もお金が入らないということです。最初の株主が会社の財布にお金を入れた後は、株価が上がろうが下がろうが、会社にはなんの損得もありません。では一体、株式の上場は会社にとって何のメリットがあるのでしょうか。

この、株式上場のメリットについては、ネット等で調べるといろいろと出てきます。どれももっともらしいのですがはっきり言って重要なのは一つです。

それは、新たに株式を発行できることです。顔も見たことのない不特定多数の人たちに対して、「新たに100万円必要だから、株式を追加で100枚発行します、誰か買ってくれませんか」という株主の募集ができるようになります。100万円必要なら銀行から借りれば良いと考える人もいるかもしれませんが、儲からなければ返す必要のないリスクマネーを出してくれるというのは、会社にとって非常に助かります。リーマンショックのような不況が起きても、銀行借り入れは予定通りに利息を払って返す必要がありますが、資本金は返す必要がないからです。経営を立て直すまでは、配当金を支払う義務もありません。儲かってから配当すれば良いわけです。もちろんいつまでたっても復活しない可能性も十分あります。そんなリスクマネーを、個人的な信頼関係のない一般投資家が出してくれるのは、株式が上場されていて、いつでも売却可能だからです。この、大規模資金調達が可能になるというのが株式上場のメリットの中でも最も重要なものです。

ほかにも、会社の知名度が上がる、従業員のモチベーションが高くなる、従業員持ち株会を利用した福利厚生が可能、ストックオプションを利用した業績連動型の報酬が可能とか、いろいろ言われていますが、それは間接的な効果にすぎません。

また、株式上場のメリットとして、上場企業になると厳しい管理体制が構築されるとか、その結果取引相手から信頼されるとか、言われることもあります。

取締役は株主から経営を任されていますから自分の判断で会社を経営することが出来ます、しかしその反面、財務諸表を作成して、株主総会で自らの経営の結果を説明する義務があります。さらに、上場企業においては、財務諸表に関して監査法人のチェックを受けることが義務付けられます。正しい情報が出回ることが、市場の発展のためには不可欠だからです。しかし、あくまで経営状況を説明する責任は取締役にあり、取締役には正しい財務諸表を作成する責任があります。株主から経営を任された以上、きちんと報告する義務があり、そのための管理体制(経理部に適切な人材を配置する等)を構築する義務があるのです。ここら辺は第5章でもう少し詳しく見ます。

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上場企業は何千何万という株主がいて、間違った情報が出回れば、たくさんの人に影響を与えることになりますから、企業は上場しようとすると、管理体制がしっかりと整備されているかどうか取引所の厳しい審査を受けることになります。つまり、上場企業になるためには、しっかりとした管理体制を構築することが条件となります。

そこで、株式上場のメリットとして、上場企業になると厳しい管理体制が構築されるとか、その結果取引相手から信頼されるとか、言われわけです。しかし、これはそもそも上場するための条件であり、結果としてメリットと言えなくもないですが、本質は上場するための義務です。また、相手方の信頼は究極的には会社が儲かっているかどうかです。上場しているから信頼できるというのもどこまで受け止めるかは結局は相手次第です。資本金の金額同様、会社が上場しているかどうかも、相手方の信用力を考える参考にはなっても決め手にはなりません。

これが上場企業の特徴です。

非上場企業(中小企業)

上で述べたように、上場企業というのは、通常数千人数万人といった株主がいます。多数の株主から少しずつお金を集めて、大規模な事業をやっています。株主は少額から投資でき、また、市場でいつでも売却できるから、お金が集まるわけです。そういう意味では、すでに説明した株式会社の理念をまさに実現しています。しかしながら、実際のところ上場企業は株式会社の最終形態です。それはなぜかというと、どんな会社も最初は創業時は規模が小さいのが当たり前で、数千人数万人の株主を集めるところまで会社を成長させるのは相当大変だからです。世の中に株式会社は数多くあれど、上場会社というのはほんの一部です。そこで、上場会社に続き、世の中の株式会社の大多数を占める、非上場の中小企業の特徴を見てみましょう。

通常、株式会社のスタートは、仲間内で行われます。信頼関係のある人達が一緒に事業をやろうとして、資本金を出し合うところから株式会社はスタートするのです。したがって、最初の株主(創業メンバー)は全員取締役になるのが通常です。最初から数百人とかの株主がいる例はありえず、せいぜい数人ですから(一人でももちろんOK)、株主が集まって話し合うのは大変ではなく、他人を取締役として選任し、経営を任せるなんて言うのはまずありません。自分が事業を始めたいから、会社を立ち上げるわけです。

株式会社の理念は、少額の投資を広く集めることにありますが、「10万円でいいから」とから、「止めたかったらほかの人に売れば良い」といくら言ったところで、軌道に乗っていない会社に何の関係もない人達がお金を出すことは希です(ベンチャーキャピタルが例外)。そういう意味で、全く会社に関係のない人たちが株式を買う上場企業というのは、株式会社の理念を実現しているものの実際にはかなり特殊な例なのです。

したがって、中小企業では、少数の株主が自ら取締役となって経営をするところに特徴があります。もちろん、会社が成長するにしたがって、友人を誘ったりして、新たな株主を増やしたりもしますが、あくまでも会社は信頼関係を基礎とした仲間内で行われます。その結果として、株式の譲渡に制限をつけるのが通常です。株式は譲渡可能というのが大きな特徴ですが、その特徴を自ら捨てるわけです。

中小企業では、株主自らがリスクマネーを出し合った少数の信頼できる仲間と会社を経営しているいます。そして、自ら経営している以上、俺やっぱり止めるから株式譲渡しますという事態は考えられないし、また、仮にあったとしても、その結果知らない人が新たに株主になって経営に参加してきたら一大事ですから、株式を譲渡できないようにしているわけです。より正確に言うと、株式の譲渡に制限があり、取締役会(中小企業ではほぼイコール株主総会)の承認がないと株式は譲渡できません。したがって、知らない人がいきなり株券を持って、株主になったから経営に参加させろと来ることはありません。

また、このように仲間内だけで経営をやっていて、新株主の勧誘はしないわけですから、財務諸表を作って広く公表する義務はありません。税務署に見せたり、お金を貸している銀行に見せたりはしますが、公表する義務はありません。

以上のように説明すると、株式会社であるにもかかわらず、株式会社の本質を捨てているようにも感じますが、数人の仲間でお金を出し合い、有限のリスクを取り合って、事業を始めることが出来るという意味では、株式会社の理念は生きています。

非上場の大企業

今までの説明では、上場企業=大企業で、非上場企業=中小企業という理解を前提に説明していきました。しかし、大企業でも非上場の会社は日本にはたくさんあります。有名どころでは、ヨドバシカメラとかがそうです(つい最近までサントリーもそうでした)。これらの会社ははっきり言って、上場しようと思えば簡単にできると思います。ではなぜしないのか、それは、上場のメリットよりもデメリットの方が大きいと考えているからでしょう。上場すると誰が株主になるかわかりません。時々新聞に載るように、外資系ファンドに株式を買い占められて買収される可能性だってありますし、業績が悪化すると株主総会で責任を追及されたりいろいろと大変です。確かに、上場すると資金調達が迅速に行えるようになりますが、そのメリットを捨ててでも、創業者一族で静かに会社を経営していきたいのでしょう。

つまり、会社の区分には、上場企業と非上場企業があり、上場企業はもれなく大企業と言っても過言ではないですが、大企業だからと言って必ずしも上場しているわけではないわけです。

以上、簿記検定にはほとんど関係ない株式会社とは何かについて説明してきましたが、経理実務としては常識に属する知識なので、しっかりと理解して下さい。

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