Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/liftingdiet/bokiplus.com/public_html/wp-includes/post-template.php on line 284

3-1. 株式会社とは何か

株式会社とは何か、それを、株式会社誕生の歴史と株式会社のもつ特徴を通じて明らかにしていきましょう。

株式会社の歴史

さて、株式会社や株券といった言葉は誰でも聞いたことがあると思いますが、それらが何かを説明できる人は意外に多くないようです。

会社を始めるにはまず、会社の財布にお金を入れなくてはいけないと説明しました。そしてそのお金が資本金です。資本金を出した人は出資者と呼ばれますが、株式会社の出資者はお金を払った時にお金と交換に株式と呼ばれるものをもらえます。そして株式を持っている人が株主です。つまり、株主とは株式会社に資本金を出した人のことです。

株式会社の歴史は、大航海時代までさかのぼります。そのころ、ヨーロッパで激しい貿易競争が起きました。それまでは、貿易は非常に儲かるため国の独占事業でしたが、造船技術や航海技術が発展し、貿易の規模が急拡大して、国と国の競争が激しくなっていきました。いち早く植民地を増やして、新規貿易ルートを作ることが重要になってきます。自分だけ儲かってればよいという各国の王様達も、ほかの国が貿易を拡大して大儲けすれば、最終的には戦争で負ける可能性が出てきたため、とにかく国を挙げて植民地および貿易拡大を進める必要が出てきました。

つまり、自分だけ儲かってればよいというのではなくて、広く国民に対して、お前らも貿易してよい、というより積極的にやれ、他の国に負けるんじゃない、という空気になったのです。そうはいっても、新規貿易ルートの拡大には、船の建造が必須であり船員の確保等莫大な初期投資が必要です。命がけで冒険して、一儲けしようという勇気ある人たちはたくさんいたのですが、造船したり、船員や傭兵を雇うお金が用意できないわけです。頼みの銀行は、担保がないと貸さないとか、事故でお金が返ってこないリスクが大きいと言って、お金をなかなか出しません。

そこで、社会の人々から、少しずつお金を集めて何とかできないかとなったわけです。銀行がお金を出すにはあまりにリスクが大きく、貸し渋るのも当然なので、みんなで少しずつお金(リスク)を負担して何とかできないかとなるわけです。そこで発明されたのが株式会社です。子供のころに1人1円ずつもらえば1億円になると妄想した人は多いかと思いますが、発想は同じです。

株式会社は、多数の人から少しずつお金を集めて、リスクの高い事業を行うために発明された技術です。そして株式会社には2つの大きな特徴があります。それは、株主有限責任の原則と株式譲渡自由の原則です。さっそく、その2つの原則によって、どうやって株式会社が広くお金を集めることに成功したのかを説明していきたいのですが、まず根底にある考えを解説します。それは、会社法という法律についてです。この点は忘れないで下さい。

会社法とは

株式会社とは何かというのは、会社法という法律が規定しています。これは、会社に関する法律であり、当然、株式会社以外の会社(合名会社等)も規定されています。しかしながら、その大半は株式会社に関するものであり、会社と言えば株式会社であると言っても過言ではありません。

もっとも、説明したいのは会社法の条文の中身ではなくて、そもそもなんで会社法という法律があるかです。かなり語弊のある言い方になりますが、会社法が株式会社について詳細な規則を決めているのは、株式会社を保護するためです。株式会社について前もって色々と決めておくことで、株式会社に関するトラブルをなくし、世の中の株式会社がスムーズに成長していけるようにしています。

この根底にあるのは、株式会社は世の中のためになるという考え方です。株式会社は金儲けを究極的な目的としていますが、結果的にそれが社会に貢献すると考えられています。我々の社会は、さまざまな発明を経て発展してきました。したがって、国としては、そういった発明が生まれやすい環境を作る必要があります。世の中にはアイデアはあるけどお金がなくて実行できないという人がたくさんいます。逆に、引退してお金はたくさんあるけどアイデアはないという人もたくさんいます。その両者をつなぎ、アイデアを実行に移すことを可能とし、新しい発明を実現させて、社会を発展させる仕組みこそ株式会社なのです。

この視点は、よく覚えておいてください。株式会社という仕組みがなんであるのかというと、もちろん先ほどの歴史的経緯を説明することになります。それでなるほどと思うかもしれません。しかし、大航海時代に生まれた株式会社が現代社会においてもたくさん存在する理由は、それが社会の発展に貢献する存在であるという認識が広く社会で共有され、それを会社法という法律で積極的に保護しているからです。もちろんその法律を作ったのは、国会であり、国会の構成員は我々が選挙で選んだ国会議員です。つまり、我々が、株式会社を社会に必要なものと考え、法律で保護しているのです。

では、株式会社の特徴である株主有限責任の原則と株式譲渡自由の原則を順番に見ていきましょう。

株主有限責任の原則

株主有限責任の原則とは、文字通り株主の責任は有限ですという原則です。この原則を理解するに当たり、もう一度純資産を復習しましょう。

純資産とは、出資者の持分すなわち株式会社であれば株主の持分(もちぶん)の事です。株主は会社を清算する時に、資産を現金化して、負債を返済した残りをもらえるわけです。最初に出資したお金より多く残っていれば、多く返してもらえますが、最初の出資額より少ない金額しか残っていなければ、それしか返ってきません。残ったお金が出資したお金より多かろうが少なかろうが、残ったものをもらえるだけです。

債権者同様、株主と会社の間にも契約があります。しかしそれは、「儲かったら分配してね、その代わり損しても返してくれとは言いません」という契約なのです。

さらに、以下のように会社の純資産がマイナスになり、負債を全額返済することが出来なくなっても債権者のために追加で支出する義務はありません。会社は法人であって、株主とは別の人ですから、会社が借金を返済できないからと言って、株主が肩代わりする理由はありません。これが株主有限責任の原則です。つまり、株主の負う責任に限りがあるのです。もし、会社の借金を返済するまで株主は自分の財産を出さなければならいしたら、それはいくら追加支出が必要か出資した時点では分かりませんから、責任に限りがないという意味で無限責任です。

3-1-1

ここも本当は注意が必要です。会社は法人であり、法律上は株主とは別の人だから、会社が借金を返せなくても、株主が返済しなくても良いのは当然という感じに今まで書いてきました。しかし、これも実は少し微妙です。

みなさんが起業して一人で会社を経営しているとします。そこで銀行からもお金を借りていましたが、事業がうまくいかず、借金が返せないことになりました。ここで、自分と会社は法律上別の人だから、自分が返さなくてよいのは当然というのは、やはり少し違和感を感じませんか?

その違和感は感覚として間違っていません。そもそも、法人というのは、法律であたかも人であるかのように扱われているだけで、自然人とは全然違います。あくまでも便利だから、社会の役に立つから、法律がそういう架空の存在を作っただけです。したがって、自然人とはいろいろ違うわけだから、借金が返せない時は当然に出資者が肩代わりしろと法律で決めることは可能です。

スポンサーリンク

法律上、人と扱われるだけで、憲法上の基本的人権の尊重等はほとんど関係なく(実は憲法では法人の人権という面白い論点がありますが)、どんな決め方をしたって良いわけです。親が借金を返せない時は、子供が返さなくてはいけないという法律は、憲法の個人の尊重の原理から許されず、憲法違反になります。しかし、法人の場合はそもそも法律で作られたものですから、株主が肩代わりするという法律を作っても憲法とは関係ないし、その方が、常識的には当然のような気がします。

しかし、現行の会社法では、株主が会社の債務の責任を負うとはされていません。それは、やはり、企業というのは社会に貢献する可能性が高いし、積極的に起業を奨励した方が良いので、あえて、会社と株主は別人であるという理屈を貫いているわけです。その結果、株主の有限責任というのは、形式的には当たり前の話なのですが、株式会社の特徴と言われます。

説明がかなり長くなったので、まとめます。株式会社は世の中のたくさんの人から少しずつお金を出してもらって事業を行うことを目的としています。したがって、なるべくお金を集めやすくする仕組みを作る必要がありました。そこで、株主有限責任の登場です。株主としては、事業が失敗するかもしれないリスクを取ってお金を投資するわけですが、そのリスクも無制限ではなく、出したお金が返ってこないというのが最大の損失であり、どんなに事業が失敗しても追加の支払いは求められないとすることで、投資家が安心して投資できるようにしたわけです。10万円くらいならリスクを取っても良いと決めて株式を買えば、株式が紙くずになって10万円が失われる可能性はあっても、それ以上の損失はありません。

補足ですが、法律上、株式会社以外にも何種類か法律で認められている形態があるのですが、その中には無限責任出資者と言って、出資者が特別に会社の借金を負担させられる会社があります。無限責任出資者は会社の借金を返し終わるまで自分が会社の代わりに払わなくてはいけません。法人とはなにかも含めどういう法律にするか次第なわけです。

以上が株主有限責任の原則でした。

株式譲渡自由の原則

株式会社の特徴の一つ目は株主有限責任の原則でした。2つ目は株式譲渡自由の原則です。それは、お金を出した人には、金額に応じて株券というものを配り、それが自由に譲渡できるようにしたのです。なお、譲渡というとあげることを想像する人が時々いますが、譲渡とは売却することです。ただであげるのは譲渡ではなく贈与です。

株主有限責任の原則の説明で、会社の清算を例に説明しました。確かに、会社をたたんだ時には、負債を返済して、残ったお金をもらうことができます。しかし、会社が存続している時には、投資を辞めたいからといって会社からお金を返してもらうわけにはいきません。いったん出資したお金はすでに船とかになっているわけですから資本金の返還はできません。株主の一人がお金を戻してほしいと言った時に、お金を戻さなくてはいけないとしたら、会社は常に財布にお金を持ってなくてはいけないこととなり、会社は自由にお金を使えなくなりますから、資本金の返還は会社を清算する時以外しないというのが大原則です。その代わり、株式の譲渡という方法で回収できるようにしました。投資したけど急にお金が必要になった時、株券を売ることができるのです。お金を貸した人は、約束した期日まで返してもらうことはできません。急に必要になったから、やっぱり明日返してくれと言ってもだめです。この点、株主は株券を売ることができるので、いつでも株主という立場から撤退できます。

つまり、株主有限責任の原則で株主のリスクを限定して投資しやすくするだけでなく、株式譲渡自由の原則により撤退もしやすくすることで、出資者が出資をしやすい、つまり、株式会社にお金が集まりやすくしたのです。

具体的に見てみましょう。10人で10万ずつ出して、資本金100万円の株式会社を設立しました。その時に1万円につき1枚の株券を渡すと決めたとします。そうすると、資本金は100万円ですから100枚の株券が発行され、一人に10枚ずつ配られます。株主はその内1枚だけ売るのも自由ですし、5枚売っても10枚全部売っても、構いません。そして、新たに株を買った人が株主になります。つまり、株券を持っている人が株主です。

そして、もし、その会社が100万円儲けたら、株券は100枚ですから、株券1枚につき、1万円ずつ配当金が配られます。当初の通り10枚持っている人は10万円もらえるし、3枚売ってしまって7枚持っている人は7万円もらえます。その反面、設立した時には参加しなかったけど、後から3枚買った人も会社が儲けた時点で3枚持っていれば3万円もらえます。

ここで、一点注意があります。上の例では、設立時に1万円の出資につき1枚の株券をもらいましたが、その株券1枚を譲渡する時、いくらで売るのでしょうか。これは、会社の状況と相手次第です。1万投資したからっと言って、その会社の経営がうまく行っていれば、1万円以上の価値があるだろうし、逆に、倒産寸前になっていれば株券とはいえごみ屑同然です。単純に考えて、資本金100万円でスタートした会社でも、売却しようとした時点で純資産が50万円になっていれば、株券1枚の価値は5000円です。さらに、そもそも売ろうとしても、買ってくれる相手が見つからなければ譲渡しようにもできません。やっとのことで買っても良いという人が見つかったとしても、その人が、今後もっと業績が悪くなると予想していれば、5000円では買わないでしょう。したがって、投資した金額をいつでも回収できると言っても、それは、全額回収できるわけではなく、会社の現在の状況、将来の見込み、相手方という3つの要素によって回収できる金額は変わることになります。リスクマネーであることには変わりません。

以上が株式譲渡自由の原則でした。

株主の権利

株主は会社に資本金というリスクマネーを投資し、経営リスクを負っている以上、会社の経営に参加できるのは自然なことです。したがって、株主は株主総会というものを開き、会社についていろいろと決めることができます。しかしながら、株式会社の理念は、社会から広く少額のお金を集めて、大規模事業を行うことが目的ですから、株主の数は多く、多数の株主が一堂に集まって会議をして、多数決で物事を決めていくというのは現実的ではありません。特に株主数が数百人以上になれば、そもそも全員が何度も集まるというのは事実上不可能です。そこで取締役という人たちが生まれます。

つまり、株主総会は何回も開けないから、基本的に株主総会で取締役という人たちを選び、その人たちに経営を任せるわけです。さらに、取締役とは別に、取締役がちゃんと業務を行っているかどうかを監視する監査役という人たちも選びます。取締役は一人ではなく、複数選ばれるのが通常で、社長とか専務とか常務とかはみんな取締役です。取締役は、株主から選んでも良いし、株主以外の経営の専門家を呼んでも別にかまいません。そして、取締役が複数いる場合は、取締役会で話し合って経営の方針を決めることになります。

リスクマネーの提供者であり、会社の持ち主である株主から取締役は経営を任されたことになり、経営は取締役が自らの判断で行います。しかし、株主は取締役がちゃんと経営をやっているか気になりますから、取締役会は毎期末に財務諸表を作成して株主総会に提出する義務があります。つまり、頻繁に株主総会を開くのは現実的ではありませんが、少なくとも年に1回は株主総会を開き、そこでは決算の承認と取締役会の選任・解任が主な議題となります。一年間の業績を財務諸表をもとに議論し、取締役を選任(新たに選ぶ)したり、解任(辞めさせる)したりします。もちろん、株主に重大な影響を与える場合は、取締役会は株主総会を招集して、株主の意見を聞かなくてはいけません。例えば、100億円使って海外の大企業を買収したいとかです。いくら経営を任せているからと言ってなんでもかんでも、取締役が決めていいわけではなく、超重要事項は株主総会で決める必要があります。

スポンサーリンク

コメントを残す

*